保育士のお給料を上げるための手段(原因と対策)

保育士のお給料を上げるための手段(原因と対策)

保育士の仕事内容と給料が見合っていないことなどが原因で、昨今では保育士離れが加速しています。待機児童問題の改善を目的として、保育士の給料の見直しや増額が実施されていますが、「仕事内容と給料が見合っていない」と感じている保育士は少なくありません。

そこで今回は、

 

・なぜ保育士の給料が上がりにくいのか

 

・どうすれば給料を上げることができるのか

 

ということをご紹介していきます。

 

「保育士の仕事を続けたいけれど給料が低すぎる…」

 

「保育士を目指しているが給料の低さが気になる…」

 

そんな悩みを抱えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

 

保育士の給料が上がりにくい原因

保育士の給料が上がりにくい原因は2つ。それは、『収支構造』と『園の事情』です。給料を上げるための対策を行う前に、まずは保育士の給料が上がりにくい2つの原因について詳しくみていきましょう。

 

保育園が財源を自由に増やすことが難しい

ほとんどの保育園の収支構造は、主な収入源が税金と保護者からの保育料で成り立っています。そのため、保育園の努力で収入を増やすことには限界があり、保育士の給料に還元しにくい構造となっているのです。

保育園の収入となる、

 

・公的資金(税金)

 

・保護者からの保育料

 

について、もう少し詳しくご紹介していきます。

 

保育園の収入は公的資金(税金)が主な収入源である

保育園の収入の仕組みについて確認していきましょう。

 

<保育園の収入の仕組み>

【保育園の収入=公的資金+保護者からの保育料】

 

この保育園の収入は、保育士の給料だけでなく、保育園の運営費も含まれています。公的資金の支払いは、定められた人員基準を基に決定されていますが、保育の現場では、人員基準以上の保育士を配置しているので、公的資金が足りていないのが現状です。例えば、1歳児6人に対して保育士1人の配置を定められていますが、実際は保育士2人を配置しているので、1人分の税金しか支払われないということです。現場では子どもの安全を考慮して、保育士を多く配置していますが、その分の収支が発生していないというのが大きな問題です。

 

保護者から貰う保育料は決まってしまっている

保育料は地域や世帯年収などから計算されるので、一般的な保育園では、自由に保育料を設定することが出来ません。また、保育料を自由に決めることができる認可外保育園は、保護者から貰う保育料のみが財源となり、原則税金の投入がありません。つまり、保護者からの保育料で税金分をまかなう必要があります。どちらにしても、人件費に還元できる収益が限定されてしまうので、保育士全般の給料が上がりにくい状況となっています。

 

保育士の待遇アップに積極的ではない保育園がある

今後状況が見直され、税金や保護者からの保育料が十分になったとしても、給料の設定は園側に一任されています。そのため、保育士の給料改善に積極的ではなかった場合、保育士に支払われる給料額が変わらない場合があります。

その原因となる、

 

・処遇改善加算

 

・キャリアパス

 

について、もう少し詳しくご紹介していきます。

 

処遇改善加算が保育士の給料に反映されていない

処遇改善加算とは、内閣府により導入された、経験年数によって給料を加算する仕組みです。加算内容については以下の通りです。

 

<処遇改善加算Ⅰ>

基礎分 職員の平均経験年数に応じて2~12%加算
賃金改善要件分 平均経験年数が11年未満5%加算・11年以上6%加算

 

このような加算で園の収入が増加しても、園側が保育士の給料に反映していないこともあります。

 

キャリアパスが設定されていない園が多く存在している

キャリアパスとは、出世をする順序のことです。保育園の場合は、「一般保育士」→「職務分野別リーダー保育士」→「専門リーダー保育士」→「副主任保育士」→「主任保育士」→「園長」という流れになります。しかし、キャリアパスは制度化されているわけではないので、園の考え方や、明確な基準がないなど、昇格による給料アップが見込めない場合があります。

保育士のお給料を上げるための手段

保育士の給料が上がりにくい原因に対する対策としては、以下の2点がポイントとなります。

 

・『財源』…処遇改善等の取り組みによる財源の拡充

 

・『保育園自体の思想』…自分が求める給料体系を用意している園への転職

 

冒頭でもご紹介したように、待機児童問題などから、保育士への需要が高まっています。行政も進んで保育士の待遇改善に取り組んでいるので、キャリアアップや良い職場への転職など、自分で行動を起こすことも大切です。給料アップの手段として、

 

・行政の取り組み

 

・自助努力

 

について、もう少し詳しくご紹介していきます。

 

行政が取り組む給料改善策

行政は『子育て安心プラン』として、待機児童の解消を加速するための予算を組んでいます。さらに、女性の社会進出支援への対応として、32万人分の保育の受け皿を整備。行政主導で、保育士に対する待遇改善の政策が行われようとしています。

 

その内容について、新しい政策内容を以下の表にまとめました。

 

<保育の受け皿拡大を支える保育人材確保>

政策 内容
処遇改善 ・月額2.6万円プラスに加え、月額6千円を追加。

・経験年数7年以上の職員に対し、月額4万円・3年以上で月額5千円を追加。(一般保育士以外)

キャリアップの仕組みの構築 保育士のキャリアパスを見据えて、リーダー的な役割を求められる職員に対する研修の体系化
業務負担軽減のための支援 ・ICT化に向けたシステムの標準仕様

・業務のICT化を行うために必要な購入費用等の補助

※ICT=コミュニケーションを重点に置いたシステムツール

人材確保への支援 市区町村が行う保育人材確保に関する取組に要した費用を支援
人材確保の取組を「見える化」 自治体ごとに公表する
福祉系国家資格有資格者への保育士養成課程・試験科目の一部免除 運用改善を検討
退職手当共済制度の継続の検討 保育園に対する公的助成の継続について検討

 

給料アップと仕事内容のICT化などが導入されることで、保育士離れに歯止めがかかるかもしれませんね。

 

処遇改善等加算

処遇改善加算が保育士の給料に反映されていないリスクがあるものの、きちんと反映させている園も多く存在しています。処遇改善加算の内容を、もう一度確認していきましょう。

 

<処遇改善加算>

処遇改善加算Ⅰ 基礎分 職員の平均経験年数に応じて2~12%加算
賃金改善要件分 平均経験年数が11年未満5%加算・11年以上6%加算
処遇改善加算Ⅱ キャリアパス要件分 ・副主任保育士、専門リーダー:月額4万円追加。

・職務分野別リーダー、若手リーダー:月額5千円追加。

処遇改善加算Ⅱでは、対象となる条件があり、習得が必要となる『キャリアアップ研修』があります。都道府県や知事が実施している研修で、以下の内容を研修する必要があります。

 

<研修分野>

  1. 乳児保育
  2. 幼児教育
  3. 障害児保育
  4. 食育・アレルギー
  5. 保健衛生・安全対策
  6. 保護者支援・子育て支援
  7. 保育実践
  8. マネジメント

 

目指す役職によって条件が異なるので、次にご紹介する『ふじのくに型保育士キャリアアップモデル』で詳しくご紹介していきます。

 

ふじのくに型保育士キャリアアップモデル

では、具体的なキャリアアップについて、『ふじのくに型保育士キャリアアップモデル』を参考に見ていきましょう。

 

<役職別キャリアパス>

区分 職種 経験年数 研修分野 習得段階 処遇改善加算
グレード3 副主任保育士 7年以上 3分野以上+

マネメント

他の保育士を指導できる +4万円/月
専門リーダー 4分野以上
グレード2 分野別リーダー 3年以上 1分野以上 自分の力でできる +5千円/月
グレード1 一般保育士 1年以上

3年未満

研修受講開始 教えてもらってできる
1年未満 OJT

(職場内訓練)

できない

 

このように、目指す役職や経験年数によって、キャリアパスの内容が異なります。経験年数だけの給料ではなく、能力に見合った給料が見込めるようになったのは、やる気アップにつながるのではないでしょうか。

 

自身で取り組める給料改善

行政による待遇改善は行われているものの、園によってその恩恵を受けられない可能性があります。不当な扱いを受けないよう、自らステップアップすることが、最短で給料アップへと繋がります。

 

自らできるステップアップとして、

 

・キャリアアップ

 

・転職

 

について、詳しくご紹介していきます。

 

キャリアアップ

「現在の職場で給料アップしたい」という人は、今の立場からのステップアップや、リトミック・児童英語など、得意分野を活かした+αの資格取得がおすすめです。資格取得前に、専門的な保育を提供する分の給料アップが見込めるかどうか、事前に交渉しておきましょう。最近では、体操や英語などの専門的な教育を行っている保育園が多いので、もし給料アップが見込めない場合は、転職を検討してみてはいかがでしょうか。

 

転職

「処遇改善加算が反映されていない」「専門資格分の給料アップが見込めない」という人は、他の園への転職がもっとも効果的です。基本給はもちろんですが、『サービス残業の有無』『処遇改善加算の反映』『キャリアパス制度』について、積極的に確認することをおすすめします。「自分からはなかなか聞きにくい…」という場合は、コンシェルジュのいる転職サイト『保育のお仕事静岡』を利用してみてください。保育園との間に入ってくれるので、確認しにくいこともお願いすることができます。転職での給料アップに失敗しないためにも、転職に特化したサイトを活用してみてくださいね。

 

まとめ

保育園の収支構造により、他の職種と比べても給与水準が低くなりがちですが、自分の行動によって今の状況を改善することは可能です。キャリアアップや転職などを視野に入れ、保育士としての正当な給料を受け取れるように取り組んでみてください。

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